1.ベトナムのIT産業規模
ベトナムのIT産業は近年飛躍的な成長を遂げており、直近の総売上高は800億USDを超えている。ベトナムのIT業界ではハードウエアの売上が全体の8割以上を占めており、残りの2割弱がソフトウェア産業の売上。
ベトナムに進出しているIT系ハードウェアメーカー(一部)
多くのハードウェアメーカーは南部のホーチミン市周辺や北部のバクニン市/タイングエン市、ハノイ市を周辺に外資系を含む様々な企業が進出しており、ベトナム国内で生産した製品を日本を含む世界各地に輸出している(輸出額:約7.5兆円/2017年)。
会社名 | 拠点 | 概要 |
Intel Products Vietnam | ホーチミン市 | 2006年設立。米系の半導体メーカー(インテル社)の半導体生産子会社。投資額は10億USD以上 |
Samsung Electro-Mechanics Vietnam | タイングエン市 | 韓国のSamsung Electro-Mechanicsのベトナム子会社。半導体やチップ、カメラモジュール等を生産している。投資額は70億USD以上。 |
Renesas Design Vietnam Co., Ltd. | ホーチミン市 | 日系大手半導体メーカー(ルネサス エレクトロニクス株式会社)の設計子会社。家電や自動車向け半導体の設計などを行っている。 |
Saigon Semiconductor Technology | ホーチミン市 | 2014年にベトナムで設立された半導体製造メーカー。半導体の生産などを行っている。 |
GES Viet Nam | ホーチミン市 | 2008年設立。米系企業。世界的な半導体機器サービス会社。 |
2.ベトナムのソフトウェア市場規模
ベトナムのソフトウェア市場規模は約1兆800億円(2017年)と推定される。内訳はベトナム国内向けが約7,875億円(全体の約73%)、海外向けが約2,925億円(27%)と推定されている。
3.ベトナムのIT業界と日本の結びつき
ベトナムのIT産業は政府からの支援などにより優秀なIT人材が豊富で、インフラ環境や治安が良いなどの理由でベトナム企業の日本向けのITオフショア開発規模は年間16億USDドル以上の規模になっている。日本向けのオフショア
ポジション | 職務経験 | ホーチミン | ハノイ |
CEO | 10年程度 | 15,000~25,000USD | 10,000~15,000USD |
CIO/CTO | 15年程度 | 8,000~15,000USD | 8,000~10,000USD |
シニアディベロッパー | 3年~6年程度 | 1,500~2,500USD | 1,200~1,800USD |
ディベロッパー | 0年~3年程度 | 600~1,500USD | 600~900USD |
シニアブリッジSE | 6年~10年程度 | 2,000~3,000USD | – |
ブリッジSE | 3年~5年程度 | 1,500~2,000USD | – |
プロジェクトマネージャー | 5年~10年程度 | 2,000~3,000USD | 1,500~2,000USD |
オフショア開発規模は年間20~40%で成長している。
・ベトナム国内のIT産業の発展に伴いベトナム国内のIT人材需要が急増しており、直近の3年間で需要が2倍程度に急増している。その結果、エンジニアの給与は急騰している。
・ベトナムの優秀なITエンジニアに関しては、現状では同レベルのインド系人材などと比較すると英語力が劣る場合が多い。
※参考:ベトナムのIT人材の給与相場(月収)
※引用(Vietnam 2019 SALARY GUIDE):https://bit.ly/2K2odFu
4.ベトナムのITオフショア開発事情
・海外の調査会社が行った調査ではベトナムは非常に魅力的なオフショア拠点と評価されている。特にITの分野で評価が高い。
※例:ATKearney(大手コンサルティング会社:アメリカ)
・2017年に行った調査(ATKearney`s Global Location Services Index)で第6位に選ばれた。
・ベトナムのソフトウェア企業の売上高の80%以上を海外向けのソフトウェア開発が占めている(日本市場向けのソフトウェア開発の割合が最も高い)。
・ベトナムのITオフショア開発の成長に伴い、ベトナムのIT企業は安価な人件費を武器に、システム開発の主に下流工程の受注を大幅に増やしており、中国やインドなどのITオフショアサービスの業界に影響を及ぼしている。
・ベトナムのIT企業では海外の顧客の案件を獲得するために、国際的な品質マネジメントシステム(ISOなど)やCMMI(プロセス成熟度評価指標)などに準拠する取り組みを進めている。
※参考(2017 Global Services Location Index/ATKearney):https://bit.ly/2KCaODr
5.ベトナムITオフショアのメリット/デメリット
①メリット:メリットとして以下などが挙げられる。
1.人件費の抑制(日本の約1/3くらい)。
2.親日で真面目なエンジニアが多い。
3.日本との距離が近く、時差が少ない(日本時間-2時間)。
②デメリット:デメリットとして以下などが挙げられる。
1.コミュニケーション問題で高い品質のシステム開発ができない。
2.小さな規模の案件の場合、コストメリットが出ない場合がある。
3.書類(設計書/仕様書)作成や進捗管理に手間がかかり過ぎる。